ハ行のことば

「ハッとする」ことがたまにある。

私は行動よりも言葉によって「ハッとする」ことが多いように思う。

 

「きつねはわかる。それでも100歩ゆずってよ。じゃあ、たぬきって何よ。

 なんで揚げ玉なの?」

昔勤務先の近くにあった富士そばで、おばちゃんが誰かに言っていた。

 

「ハッとした」

そして「きつね」と「たぬき」の値段が一緒なのも気になった。

 

「その道を右折してください。そう左側の道です。」

先週乗ったタクシーで運転手にそう指示した私。

 

「ハッとした」

きっと運転手は「はぁ?」と思っただろう。

 

「人は自分のことが一番見えてないからな。」

とある事情で前歯がない友人がお好み焼きを食べながら話していた。

付き合っている彼女の連れ子がどうだこうだみたいな話しをしていた記憶があるが

 

「ハッとした」

友人はその後も語っていたから、前歯がないことは彼にとってもはやデフォルトの

状態なのだろう。

 

「本当は人間が苦手なんです。すみません。黙っていて。。。。」

涙ながらにカミングアウトした、勤務先にいたアルバイトの女の子。

 

「ハッとした」

 今言うのか?みんなでUNOやっている時に言うのか?

そんで「リバース」カード出すのか?

 

「全ての道はローマに続くから大丈夫」

中3の時、自転車でお台場に向かっていたが完全に道に迷っていた時に

友人が言ったことば。

 

「ハッとした」

 俺たちはローマを目指していたんだっけ??

お台場でキャミソール見に行きたかったんだよな。。。。

 

「これは彼女のお土産に買って行くわ」

高校の修学旅行で友人が言ったことば

 

「ハッとした」

 その彼女も同じ修学旅行に来てるけど・・・買うのか?

それお土産か?

 

「8回目のデートで初めて過去から逃げ出した。9回目の夜明けにジェラシーを見て、

 10回目の夜に愛してた」

私が中2の時にリリースされたglobeのJOY to the loveの中にある歌詞


Joy to the love (globe )

「ハッとした」

10回もデートしないと愛されないだな。長いな。

そして何より、この歌詞のあとにマークパンサーが「アクション、テンション、イルミネーション」と歌っているが、何のためなのか意味が分からない。

 

「あの時、守るからと言ってくれたこと嬉しかった。忘れない。でもごめんなさい」

大学3年の冬にフラれたときの言葉

 

「ハッとした」

 多分その発言、私じゃない。

私、年上の人に守るとか偉そうなこと言わない。

 

「私、別れたの。さっき。ちょっと付き合ってくれないかな。」

大学4年の時、大学3年の冬にフラれた先輩からメールがきた。

居酒屋で話しを聞いた。

「理由も言わずに別れたいって。言われてね・・・。他の相手ができたのかな。」

付き合っていた男性のことは知らないからなんとも言えない私を前に

先輩が続ける。

「男の守るって何なんだろうね。わからないね。」

 

「ハッとした」

そいつ!そいつが言ったんだ!やっぱり俺じゃない!

約1年間のモヤモヤが晴れてどこかすっきりした気分になった。

 

「ハッとした」ことを思い返してみたけど、

大したことでハッとしてないし、パッともしていないな。

 

好み、

「お兄ちゃん。大谷くんのホームラン見たかい?」

先週自宅近くの中華料理屋のカウンターで昼食を食べていた時のことだ。

不意に話しかけられ、話しかけてきた相手を確認せず

瞬間的に「ふぁい!」と返答をしてしまった。

誰が話しかけてきたのかを確認すると、私の左側にいたお爺さんだ。

全く知らないお爺さん。

耳に補聴器。服装はグレーのラコステセーターとチノパン。

上下グレー配色の見た目70後半~80代くらいのお爺さん。

表現は良くないが私の中の「ジジイ」と「お爺さん」の境界線は、

その人の身なりによってカテゴライズされる。

この人はグレーの同一配色という身なりだが、髪も綺麗に散髪されているし

目も俗世離れした目をしていない。

『ファッションなんて気にする年じゃあない。タンスの中にある服を引っ張りだして

着ているだけさ。だけど外に出るからそれなりの身なりにしなくちゃあ。恥ずかしいよなー』といった雰囲気を感じる人だった。

私は一瞬でこの人を「お爺さん」グループに入れた。

 

冒頭で全く知らないお爺さんと書いたが、実は知っている。

それはこのお爺さんのメニューの注文に引っかかりを感じていたからだ。

「お姉ちゃん。注文いいかな。小龍包、餃子、青菜の炒め物、かに玉を全部2つずつ」

注文を取ったお姉ちゃんも私もきっと思った。

「・・・量多くないか?」

「食べきれるのか?てゆうか、メインの料理はなんだ?」

「いやそもそもカウンターに置くことができるのか?いや、無理だろ。」

しかしバイトらしきお姉ちゃんは、売上を考えたのか(きっと考えていないだろうけど)淡々と注文を繰り返し、厨房にオーダーをしていた。

厨房も聞き返すこともなく、オーダーを受けている。

私は困った。

絶対にこの品数では、カウンター内のパーソナルスペースを侵してくる。

お客のペースを考えて、1品ずつ持ってくる気が利く店じゃない。

なんなら全部一緒に持ってくる。限られたスペースでは置けない。

そうすると左右のスペースに活路を見つける。

ただでさえ狭いカウンターは好きではないのに、他人の料理が侵攻してくるなんて。

まるでポーランドの気分。

侵攻してきたお爺さんの料理を私が誤って食べようものなら、それはもう大戦の始まりだ。

そんなことを考えていた時に、冒頭の話しをしてきた。

お爺「すごいな彼は。アメリカでもホームランが打てるんだな。」

私 「そうですね。規格外ですね。」

お爺「・・・・・・。」

私 「・・・・(なぜ。無視??。)」

お爺「彼はメジャーリーガーだな。もう」

私 「そうですね。すごいですね。(さっきの聞こえてたのかな?)」

お爺「・・・・・。」

続かない。というか明らかに私からの返答は求めてない。

思い返せば、お爺は私の顔をみて話しかけてきてはいない。

そうか、補聴器だと思っていたが耳につけていたのはラジオのイヤホンなのかも知れない。お爺はラジオと会話していたのだ。

これは地味に恥ずかしい。

お爺からしたら右側の知らない中年男性が相槌をしてくるのだ。

自分の独り言に侵入してくるんだ。お爺からしたら私がドイツだ。

下手な対応をしたら大戦が始まると心配させてしまったかも知れない。

お爺の記憶を呼び起こしてしまったかも知れない。

私は申し訳ない気分と恥ずかしさで、左肩を内側にいれて「お爺ブロック」をした。

このお爺ブロックは会話もさることながら、料理の侵攻も食い止めることになる。

最初からこうしておけばよかったのだ。

「お兄ちゃん。大谷くんのホームラン見たかい?」の質問は気になっていなが

この際、ラジオのDJか距離はあるが厨房の料理人に話しかけたんだろう。

と思いこむことにした。

そうこうしている内に、私の料理が運ばれてきたので食べることに集中した。

 

「多いな。」

次にお爺が発した言葉だった。

お爺ブロック中だったので、まじまじと見ることは出来なかったが

予想した通りお爺に運ばれてきた料理の多さに、お爺が漏らした感想だ。

幸いお爺の右側はお客が帰った後で、スペースがあったため大戦は回避したが、どう見てもお皿が多い。

70後半~80代が一人で食べる量じゃない。佐川急便のお兄ちゃんが食べる量だ。

照れ隠しなのか、お爺は私に笑顔を向けてきた。

その顔は推測だが『お兄ちゃん少し食べるかい?』といった感じの笑顔。

いや、たべねーよ。と私は思ったが、お爺は止まらない。

『この量は多いな。お兄ちゃん食べないよね?」

今回は確実に話しかけられた。確実だ。

どんなラジオの掛け合いを想像しても、こんな会話は存在しない。

0に近いが可能性があるとすれば、お爺がDJで街ブラの状況を電波に乗せているくらいだが、お爺は多いな発言より前は一言も発していない。(10分くらいだっただろうか。)放送事故になる。この可能性もない。きっとない。

ツイキャスの可能性があるかもしれないが、お爺はきっと知らない。

厨房の可能性もない。厨房に話しかける声量じゃないからだ。

ということは、ここで指すお兄ちゃんは私だ。「お兄ちゃん=私」のシンプル構図だ。

しかし、お爺。残念だ。本当に残念だ。

私は食べられないことはない。食べろと言われれば食べられる。

問題は量じゃない。

お爺とほぼ同じ料理を注文してことが問題なのだ。

そう、私は「天津飯セット(小龍包付き)と餃子」を注文していたのだ。

被っていないのは、青菜の炒め物だ。

「いやー。食べられないです。」とお爺に断りをいれると

「そうだよね」と答えるお爺。ようやく会話が成立した。

と同時に冒頭の「大谷のホームラン」のくだりは奇妙ではあるが

ラジオDJ or 厨房に話しかけた説が有望となった。

この会話をきっかにお爺は、私に話しかけてくるようになった。

「家族はいるのか?」

「仕事はしているのか?」

「海外にも会社の支店はあるのか?」

「健康なのか?」

etc・・・

私は答えられる範囲ではあるが、1つ1つの質問に答えた。

お爺も笑顔で聞いている。

しかし困ったこと2つがある。

1つ目は私の返答の後に、お爺も自分のことを話すことだ。

例えば「家族がいるのか?」の問いに「娘と妻がいます」

とシンプルに答えると「そうか、私はね・・・・」

それが長い。お爺だけではなく、お爺の息子夫婦のことまで話すから長い。

そして2つ目は、質問・返答・傾聴をお互い繰り返しているので料理が進まない。

なんならお爺は運ばれてから一口も料理を口にしていない。

店員からしたら「飯食えよ」と言いたくなるし、私は言って欲しかった。

「そうだ。お兄ちゃん。これ食べるかい?」

ようやく質問が終えたと思ったら、お爺はカバンからある袋をだしてきた。

「たい焼きなんだけど、食べられないからあげるよ」

いや、どこで渡しているんだ!飯屋だぞ!

「5個買ってきたんだけど、食べられそうにもないからさ」

大丈夫か?お爺!あんた!たい焼き5個買った足で、この店に来て小龍包、餃子、青菜の炒め物、かに玉のダブル頼んだのかい?胃袋のツマミが壊れたのか?満腹中枢が壊れたのか?なんだ!最後の晩餐にでもするつもりだったか?

もうお爺のやりたいことが分からない。受け取るべきなのだろうか。

お爺はまた照れ隠しの笑顔を向けてくる。もはや怖い。

「いいんですか?では、、、お言葉に甘えていただきます」

「そうか!ありがたいねー」といってお爺は袋からたい焼きを2つ渡してきた。

更の状態のたい焼きを。

「袋ないから申し訳ないけど」

「あっ。・・・・はい。」

袋くれよー!どうすんだよ!手持ちで帰るのかよー。

いねーよ。たい焼きを手に持って歩く中年。

とりあえず、いただいたたい焼きはティッシュの上に置いたが、持ち帰り方法に

困惑をしているとお爺が店員に声をかけた。

「お姉ちゃん。俺こんなに食べられないからタッパーくれないかな?持ち帰りで」

こんなにも何もあんたは、一口も食べていない。完全テイクアウト状態だ。

店員のお姉ちゃんは、特に違和感もなくタッパーを持ってカウンターの上に置いた。

餃子と小龍包をタッパーに詰めながらお爺は、話しを続けた。

「来週から入院なんだよ。この年になると色々悪くてね。」

「・・・・・そうなんですか」

「1ヶ月くらいの入院なんだけどね。楽しくないのよ。」

「年齢もあるからね。次があるか分からない。今日が最後の晩餐かもしれない。」

「お兄ちゃん。楽しかったよ。さようなら」

私は少し後悔した。

無茶な注文をしているお爺を少なからず「イカれた人」だと思っていた。お爺は食べることが目的ではなく、これから訪れる入院生活に備えて、食べたいものを注文したかったんだ。食べられれば良いがそれは「おまけ」。

目の前に広がる好きな料理を見ることで、気力を奮い立たせていたのだ。

タッパーにいれているが、お爺はきっと家に帰って夕食時にこの料理を広げるのだろう。気力を奮い立たせるために。

お爺の言葉に対して、なんにも言えない状況で私はあることに気がついた。

それはお爺の耳だ。ラジオだと思い込んでいたが、やはり補聴器だった。

なぜわかったか?それは耳から外れていて全体像を見ることができたからだ。

お爺は最初から私に話しかけていた。しかし、何かしらの理由で聞こえなかったんだ。

だから、お爺は補聴器を外して私の声を聴き取ろうとした。

質問に対して、シンプルに答えた自分に少し嫌気が差した。

もっと具体的に話すべきだった。もう少し愛想よく答えるべきだった。

中華料店のカウンターでこんなことを思う人間なんていないだろうけど、、、、

お爺は帰っていった。タッパーを手に持ち「さようなら」と言って。

私も帰ろうとカウンターに目をやると、空のタッパーが1つ置かれていた。

お爺がたい焼きように置いていってくれたのだ。

お爺の優しさに感謝し、帰宅した。

妻が手に持ってあるタッパーを見て「お土産?」と訝しげに聞いてきた。

私は「みたいなモノ」と答え、温めて食べた。

 

お爺。また会いたいです。中華料理屋で。

今度は天津飯食べてください。

そこまで美味しくはないかもですが、量はあるからダブルで頼む必要ないです。

あと、多分ですけど、きっと。

補聴器壊れてます。

ジャーニー

4月を迎え、社会人としての人生カウントが1つ増えた。

ただそれだけのことなのだけど、「そわそわ」してしまう自分がいる。

毎年この時期は、「そわそわ」している気がする。

何かを始めたいと思いはするが、考えるまでにはいかない。

そうこうしている内にクールビズの時期がきて、七分丈のYシャツを買おうとして

梅雨がきて、折りたたみ傘を買おうとして、

本格的な夏がきて、甚平を買おうとして、

秋だな。なんて思っている内に、冬になって広瀬香美が流れて

食べもしないケーキとチキンを買って、胃もたれして年が明ける。

 

毎年こんな流れを繰り返しているだけなのに、

買ったのはケーキとチキンだけなのに、4月がくると「そわそわ」する。

「そわそわ」だけを脳内検索をすると、高校入学時代の記憶が上位にくる。 

 

高校に入学した日だ。

 

第一志望の高校に入学した私は、楽しみにしていた。

それは新しい出会いに。

私は東京出身ではあるが下町の育ちで、TVの街頭インタビューで渋谷やお台場にいる

キャミソール姿の女性を見ては「都会はすごい。女子がブラジャーで歩いている」と

毎日思っていた。

 

いくら下町でも腐っても都内。

言い過ぎと思われるかもしれないが、私の中学本当に下町で指定ジャージの色が上下エメラルドグリーンという中学校だった。

3つ上の姉がそのジャージを着ているのを小学生の時に見て、三沢光晴かよと本当に思った。

目立つ色ではあるから、部活で区の大会なんかに出ると同級生を探すことに苦労はしないのだが、周りの中学生から好奇な目で見られるのが嫌で、みんな一人にならないように集団でいつも動き、余計に目立ってしまっていた。

なんのメリットも感じないジャージ。

女子なんかは楽だからという理由で塾やお祭りにもそのジャージでくる。

帰り道に気になる子を誘って土手で話しをしていても、

エメラルドをまとっているが故に魅力が半減してしまう。

やっと誘い出したのに。

手をつなぎたいのに。

頭の中ではその先のシミュレーションもできているのに。

エメラルドが邪魔をする。

もはや中学生にいけない秘め事をさせないために、この色を採用したのか?と

勘ぐりたくなるくらいのエメラルド。

 

でも、高校は違う。

高校はいろんな地域から来る。

ましてや私が進学した高校は「品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区・・・」と洗練された地域に住んでいる女子が数多く進学してくる学校であり、校舎もそれなりに綺麗で人気のある高校だった。

中3の秋に塾の先生にその話しを聞き、学校見学もせずにそこを第1志望にした。

勝手にカワイイ子がくると思い込んで。

 

すごく勉強した。

寒さを耐えるために、祖母が作ったちゃんちゃんこを着て勉強した。

サムシングエルスの「ラストチャンス」を聞き自分を勇気づけた。

そうすべては、エメラルドを私服にして地元を歩き回っている女子から離れるため。

たまたま同じ時期に近い地域に住んでいる子供たちを集めた中学とは訳が違う。

そもそも高校は義務教育じゃないし、ましてや洗練された地域から生徒が集まるんだ。

きっとカワイイ子が集まる。そう信じていた。

 

そして入学式。

信じていてよかった。いままで見たことのないくらいのキラキラした女子がたくさん

歩いていた。もう「そわそわ」MAXだ。

入学後しばらくして他クラスの港区出身の友人が「お前のクラス可愛い子いないな。」言っていたが、私には信じられなかった。

このクラスのレベルで可愛くないなら、こいつはエメラルド中学を2週間も過ごすことができまい!と変な優越感を抱いたくらいだ。

とにかく幸せだった。この空間で3年間過ごせるんだ。

こんなに洗練されている子ばっかりだったら、もはやジャージなど私服として使用するわけがない。

夏休みなんかはキャミソールなんだろう。

花火大会は浴衣なんだろう。うなじ見せるんだろう。手には何を入れるんだかわからない和柄のお洒落な小袋を持ってくるんだろう。

冬はラルフローレンのマフラーをしてくるんだろう。

4月1日なのに12月くらいまでの学生ライフをイメージした。

 

これは最高だ。努力してよかった。本当に思った。

・・・午後の身体測定を行うまでは。

 

この日は入学式→クラスメイトと初顔合わせ→昼食→オリエンテーション→身体測定というスケジュールで進むことになっていた。

私は昼食に始まったオリエンテーションの時間に、12月以降のイメージをしていた。

1月頃にクラス替えの事実をしって、せっかく仲良くなったクラスが解散する

なんか思い出を作ろう!みたいな感じになって。

みんなで出かけて、そこでなんやかんやあって・・・好きな子に告白して・・・

あー!いい思い出だ。あとは実現するだけだ。

そんな幸せをイメージしていた中で、担任が発した言葉が耳にはいってきた。

「・・・2年生はアカ 1年生の君たちはミドリだからね。」

うん?色の話し?何の話かわからないけど、確かに色の話しをしていた。

2年生は・・・の文言から推測するに学年ごとに設定カラーがあるのかなくらいの理解ができた。

入学初日で初めましての同級生に「今何の話し?」と聞く勇気が湧かず

その解釈で自己理解を進めていた中で担任が続けて言った。

担任「じゃあ、今から名前を呼ぶからジャージを取りに来てください。アオキさん」

アオキさん「はい。」

担任「ジャージに刺繍されている名前も確認してくださいね」

 

衝撃だった。

担任がアオキさんに渡しているジャージの色がミドリだった。

しかもエメラルド寄りの・・・・。

 

なぜなんだろう。どうしてなんだろう。

どうしてジャージにミドリを使用しているんだろう。

塾の先生はどうしてジャージの色を教えてくれなかったのだろう。

どうして1年後に生まれなかったのだろう。

 

1月までイメージしていた女子の服装が・・・

エメラルドに塗り替えられていく。

「そわそわ」しぼんでいく。

 

見慣れた色のジャージを来て身体測定に向かった。

心なしか他の同級生よりも着こなしている私がいた。